この おはなし を よみました ♪
『うみ に おちた ぴあの』
せかい の むかしばなし (よはん・あうぐすと・すとりんどべり/げんさく)
うみ に おちた ぴあの
むかし むかし の、 しずか な なつ の ゆうがた の こと でした。
うみ の そこ では、 さかなたち が ゆっくり と およぎ まわって いました。
そこへ、 いきなり おおきな おと が した か と おもう と、 まっくろ な もの が うみ に おちて きた のです。
ぽろろん、 ばーん!
くろくて おおきな もの は ふしぎ な おと を ひびかせ ながら、 うみ の そこ で とまりました。
おちて きた のは、 ふね で はこばれて きた ふるい ぴあの でした。
ひっこし の にもつ を りく に あげる ひと が、 うっかり て を すべらせて しまった のです。
「いったい、 なんだろう?」 さかなたち は よって きて、 ぴあの を みました。
「もしかすると、 たべもの かも しれない よ」 さかな の あじ が、 いいました。
「いいえ、 これ は かがみ です よ。 だって、 わたし の すがた が うつって いる じゃ ありません か」
と、 すずき が いいました。
「ぼく は、 はたおりだい だ と おもう よ。 だって、 こんな に たくさん の いと が ついて いるんだ もの」
とびうお は、 ぴあのせん を みつけて いいました。
それから おおきな さば が ぺだる の うえ に のる と、 ぴあの が 『ぐわーーん』 と なった ので、
さかなたち は おどろいて にげて いって しまいました。
その よる、 うみ は あれて いました。
なみ が ぴあの を ゆさぶる と、 ♪ぽろん、ぽろろん と、 おんがく が ひびきます。
ぴあの は ひとりぼっち で、 うたって いた のです。
あさ が くる と とびうお の むれ が きて、 こわれ かけた ぴあの の はこ で あそび ました。
すると ぴあの から、 やさしい おと が きこえました。
♪ぽろん、 ぽろろん
うみ の そこ で なって いる ぴあの の おと は、 りく の さんばし の ところ まで きこえて きました。
♪ぽろん、 ぽろろん
「ねえ、 なんだろう? うみ の なか で おと が して いる よ」
ぴあの の おと を きいた おとこ の こ が、 おんな の こ に いいました。
「あれ は きっと、 にんぎょ が うたって いる の よ」
おんなのこ は、 ゆめ みる ような こえ で こたえ ました。
わかい おとこ の ひと と おんな の ひと も、 ぴあの の おと を ききました。
♪ぽろん、ぽろろん
とても しあわせ な ふたり には、 かすか に きこえて くる おんがく が、 じぶん たち の こころ の なか で ひびいて いる ように おもわれました。
ぴあの は なつ の あいだじゅう、 そこ に おちて いました。
だけど、 だんだん こわれて、 けんばん も、 ぴあのせん も、 ぼろぼろ に なりました。
けれど、 なみ や さかなたち が さわる たび に、 ♪ぼろん、 ぼろろん と、 うたって いました。
さて、 つき が うつくしい よる の こと です。
ひとびと は、 ぼーと に のって あそんで いました。
♪ぼろん、 ぼろろん
うみ の そこ から ぴあの が ひびいて くる と、 みんな が わらいました。
こわれかけた ぴあの は、 おかしな おと しか だせなく なって いた のです。
でも たった ひとり だけ、 かなしそう に うみ の そこ を みつめて いる ひと が いました。
それは、 うみ に おちた ぴあの の もちぬし だった、 おんなのひと です。
もう ふるぼけた ぴあの でした が、 おんなのひと には、 たくさん の おもいで が ありました。
ひとりぼっち で さびしかった よる、 なぐさめて くれた ぴあの。
こい を して、 うれしくて、 たまらない ひ に ひいた ぴあの。
その ぴあの で おんなのひと は、 あかちゃん の ため の こもりうた を ひきました。
ちいさかった あかちゃん は、 もう りっぱ な しょうねん に なって、 おんなのひと を のせた ぼーと を、 ぐんぐん と こいで います。
「あの ぴあの は、 わたし の たいせつ な ともだち だった わ。
わたし の こころ の すみ まで しって くれて、 なんじゅうねん も、 いっしょ に うたって くれた わ。
それが、 いま は もう、 さわる こと も みる こと も できない ところ に いって しまった。
わたし は にど と、 だいすき だった ともだち に あう こと は できない の だ わ」
おんなのひと は、 そっと ためいき を つきました。
なつ が おわって、 あき が きました。
あらし が うなり ながら、 うみ を とおりました。
はげしい なみ に うたれて、 ぴあの は、 ひっきりなし に うたいました。
でも、 おかしな おと しか だせなかった ぴあの は、 さいご の ちから を ふりしぼって、 うつくしい おと で うたいました。
♪ぽろん、 ぽろろん ♪ぽろん、 ぽろろん ♪ぽろん、 ぽろろん…
それは、 うみ に おちた ぴあの が、 たいせつ な ともだち だった おんなのひと に おくる、 おわかれ の うた だった のです。
ぴあの は うたい ながら、 うみ の そこ へ ながされて いきました。
そして それっきり、 ふしぎ な おんがく が きこえる こと は ありません でした。
おしまい
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