この おはなし を よみました ♪
『せかい の はじまり』 せかい の むかしばなし ちり きょうわこく(なんべい)
せかい の はじまり
むかし むかし、 この よ の なか には やま も なく、うみ も なく、にんげん も、とり も、くさ も、なかった ころ の おはなし です。
てん には、かぞえきれない ほど たくさん の かみさま が、すんでいました。
その かみさま たち の なかに、たった ひとり、ほか の かみさま の なんじゅう ばい も、なんびゃく ばい、なんぜん ばいも、なんまん ばい も おおきな からだ の、おおがみ さま が いました。
おおがみ さま は、からだ が おおきい ばかり で なく、ほか の かみさま の なんまんばい も、つよい ちから を もって いました。
かみさま たち が わるい こと を したり、 おおがみ さま の いう こと を きかなかったり すると、 おおがみさま は、なんびゃくにん もの かみさま を ひとつかみ にして、やっつけて しまうのです。
おおがみさま に かなう ものは、ひとり も いません。
かみさま たちは、いつも おおがみさま に にらみつけられて、 はたらかなくては ならなかった のです。
そこで あるひ、おおがみさま が くも を まくら に して ひるね をしている あいだに、かみさま たち が あつまって、そうだん を はじめました。
ひとり の かみさまが、たちあがって、
「しょくん、われわれは、あさ から ばん まで おおがみ の いうとおり に はたらいて いなくては ならない。
われわれ には、ゆっくり あそんでいる ひま も ない。
これでは、きゅうくつ で たまらない ではないか。
どうだ、われわれが ちから を あわせれば、あの おおきな おおきなおおがみ を やっつける ことも できるだろう。
おおがみ さえ やっつければ、われわれは、だれからも しかられずにあそんで いられる のだ。さあ、おおがみ を やっつけよう ではないか」 と、いいました。
「そうだ、そうだ!」 「おおがみ を やっつけよう!」
おおぜい の かみさまが、さんせい しました。
けれども、なかには、
「ぼく は いやだ。はんたい だ」 と、いう かみさまも いました。
「おい、どうしてだ? きみは おおがみに おさえつけられている ほうが いいのか?」
「そうじゃない。おおがみさま の おおきさ と ちからの つよさ を かんがえて みたまえ。
ぼくたちが どんなに おおぜい あつまっても、ぜったい に かなわないよ。
おおがみさまは、どんなこと だって できる のだから。
おおがみさまと けんか したら、どんな め に あうか わからないぞ。
いま の まま が、いちばん いい と おもうよ」
すると、あっち から も こっち から も、
「なるほど、そう だなあ。やっぱり たたかう のは むり だ。 ぼく は いやだ」 「ぼく も いやだ。このまま で いいよ」
と、いう こえ が きこえました。
「なんだい いくじなし。おおがみが こわい のか。おおがみを やっつけよう」
「だめだ。おおがみさま に て を だすな!」
「やっつけるんだ!」 「おい、やめろ!」
かみさまたち は いつのまにか ふたつ に わかれて、とっくみあい の けんか を はじめました。
その さわぎで、とうとう おおがみさま が、おきて しまいました。
おおがみさま は、かみさまたちの あらそい を じっと みまもり ました。
そんな こと とは すこしも しらずに、かみさまたちは むちゅう に なって、けんか を つづけました。
どうやら、「おおがみを やっつけろ!」 と、いう かみさまたちの ほうが つよい ようで、 「おおがみさまに、てを だすな!」 と、いっているかみさまたちが、まけそう に なりました。
そこで おおがみさまは、のっそり たちあがって、どしん!どしん! と、あし を ふみならし ました。
すると くも の した で、かみなり が ごろごろ なり、いなずま が ぴかぴか と ひかり ました。
「しようのない、やつらだな」 と、いいながら おおがみさまは、
「おおがみ を やっつけろ!」 と、いって いた かみさまたち を、 ひとまとめ に して つかみました。
「ろくでもない こと を かんがえる やつら は、こうして くれよう」
と、いって、ぺっペっ と、つば を はきかけ ました。
すると、つかまえられた かみさまたち は、おおがみさま の て の なかで、たちまち ひとかたまり の いし に なって しまいました。
おおがみさまは、その いし を おもいきり けとばしました。
いしは びゅーん と、とんで、そら を つきやぶって ちじょう に おちました。
おちた いし は、こなごな に とびちって やま に なりました。
ところが、やま になった いし の かけらの なかの ほう には、 まだ いきている かみさまが いました。
「おい、たすけてくれ。こんな ところ に とじこめたりして、まったく ひどい おおがみさまだ!」
と、いって、かみさまたち は まっかに なって おこりました。
その いきおいで、やま の なかは にえくりかえり ました。
ごうごう、うなり を たてて、けむり や、はい や、いわ を はきだして、かざん と なりました。
かざん の なかで、かみさまたち は なおも、
「ああ、きゅうくつ だ、きゅうくつ だ」 と、わめいて もがきました。
その ひょうし に、かざん から まっかな ひばしら が あがり、 それ と いっしょに かみさまたちは、かざん から ふきあげられて しまいました。
かみさまたちは、たかく たかく まいあがって、そら に とどきました。
おおがみさまは、すぐに かみさまを そらに ぬいつけて、ほし に してしまいました。
こうなっては、どんなに あばれても、そら から はなれる こと は できません。
かみさまたちは、
「こんな こと に なる と わかって いたら、おおがみさま を やっつけよう と するんじゃ なかった」
と、いって、なみだを ぽろぽろ こぼしました。
その なみだ が たまって、うみ が できました。
さからう かみさまたち を やっつけた おおがみさまは、いちばん したの むすこ を つかまえて、ふっ と いき を かけました。
すると、にんげんの おとこが できあがりました。
「ほら、ちじょう を みてごらん。おまえは あそこで くらすんだよ」
おおがみさまの むすこは、ひらひらと ちじょう に おりて いきました。
「ひとり では、かわいそう ですわ」
と、おおがみさまの おくさん が いいました。
「しんぱい しなくて いい。もう ひとり つくって やるよ」
と、いって、おおがみさまは そばに いた、よい かみさまを つまみあげて、いき を ふきかけ ました。
こうして、おんな の ひと が できあがり ました。
「おまえは おとこのひと を さがして、ふたりで なかよく くらすんだよ」
ちじょう に ついた おんな の ひとは、ごつごつ した いわ だらけの じめん を あるいて おとこの ひと を さがしました。
「おお、かわいそうに。あし の うら が、さぞ いたかろう」
おおがみさまは こういって、じめん に くさ を はやし、はな の じゅうたん を ひろげて やりました。
おんなの ひとは たいそう よろこんで、はな を つむと、くうちゅう にはなびら を まきちらしました。
すると はなびらは、うつくしい とり や ちょう や、いろいろな むし に なって、おんなの ひと の まわり を とびまわりました。
おんなの ひとは、ずんずん と あるいて いきました。
そのうち に、おなか が すいて きました。
「なにか、たべたいわ」 と、いって、おんなの ひと が たちどまると、め の まえの くさが ぐんぐんと のびて、おおきな き に なりました。
き には、おいしそうな み が なっています。
おんなの ひとは、それ を とって たべました。
げんき が でる と、また たび を つづけました。
そして ようやく、おとこの ひとを みつけました。
ふたりは ひとめ みた だけ で、すき に なりました。
そして て を とりあって、なかよく くらすように なりました。
しばらくすると、
「あの ふたりは、どうしたろう」
と、いって、おおがみさまは てん に あな を あけて、そうっと おおきな あたま を のぞかせました。
おおがみさまの あたまは きらきら ひかって、ちじょう を てらしました。
「まあ、ごらんなさい、あの ひかりを」
と、いって、おとこの ひと と おんなの ひと は そら を みあげました。
ふたりは きらきら ひかる まるい もの に、たいよう という な を つけました。
おおがみさまの おくさん も、ちじょう のことが しりたくて、たまらなくなりました。
そこで、おおがみさまが のぞいて いない ときに、そっと あな からかお を だして ちじょう を みました。
「あの やさしい ひかりを、みて ごらん」
おとこの ひと と おんなの ひとは、そら を みあげて いいました。
その やわらかい ひかりに、つき と いう な を つけました。
こうして、おおがみさまの つくった ふたりの にんげんは、やがて こども を うみ、たいよう と つき に みまもられて、たのしく くらし はじめたのです。
おしまい
If you want to read the Japanese sentence with 漢字, click the picture of story, please^^
If you want to read 漢字 + ふりがな, click!
Special thanks to [ 福娘童話集 ]
ほかの おはなし を よむ
Contents
↑ もくじ のページ へ
*