この おはなし を よみました ♪
『ぴのっきお』 せかい の むかしばなし
ぴのっきお
むかし むかし、 こども の すきな とけい しょくにん の ぜぺっと じいさん は、 あるひ、 こども の かわり に き の あやつり にんぎょう を つくりました。
にんぎょう の なまえ は、 ぴのっきお です。
め が くりくり と おおきくて、 はな は つん と のび、 なかなか に かわいい おとこのこ です。
ぴのっきお が かんせい した よる、 ぜぺっと じいさん は ほし に ねがい を かけました。
「どうか、 この ぴのっきお が、 ほんとう の こども に なります ように」
さて、 まよなか のこと、 ぜぺっと じいさん の いえ の まど から、 いっぴき の こおろぎ が はいって きました。
そして ぴのっきお を みつけると、 れいぎ ただしく あいさつ を しました。
「やあ、 かわいい ぼうや。 わたしの なまえは じみにー・くりけっと。 どうか、 じみー と よんで ください」
さあ、 そのとき です。
とつぜん、 よぞら の ほし が きらり と まぶしく かがやく と、 すーっと ほし の ひかり に のって、 ほし の めがみ が ぴのっきお と じみー の まえ に やってきた では ありませんか。
「あっ、 ほし の めがみさま」
おどろく じみー に ほし の めがみ は やさしく ほほえむ と、 うつくしい こえ で ぴのっきお に いいました。
「やさしい ぜぺっと じいさん の ねがい は、 ほし に とどきました。
ぴのっきお、 あなたに こえ と じゆう を あたえましょう。
そして、 ほんとう に よい こども に なったなら、 ぜぺっと じいさん の ねがいどおり、 にんげん の こども に して あげましょう」
そして めがみ は、 まほう の つえ を くるり と ふりました。
すると き で できた にんぎょう の ぴのっきお が、 なんと にほん の あし で たちあがった のです。
「あらら。 き の にんぎょう が うごきだした ぞ。 こりゃ、すごい!」
びっくり する じみーに、 ほし の めがみ は やさしく いいました。
「じみにー・くりけっと。 もし よろしければ、 ぴのっきお が いいこ に なれる おてつだい を して いただけませんか?」
「えっ! わたし の なまえ を ごぞんじ で! さすが は ほし の めがみさま。
かしこまりました。 この じみー、 ぴのっきお が いいこ に なり、 かならず にんげん に なれるよう、 がんばらせて いただきます!」
「うふふふ。 ありがとう」
ほし の めがみ は ほほえむ と、 ほし の ひかり に のって かえって いきました。
さて、 あさ に なり、 め を こすりながら おきだした ぜぺっとじいさん に、 ぴのっきお が げんき よく あいさつ を しました。
「おはよう、 おとうさん!」
「ああ、 おはよう。 ぴのっきお、 もう おきて いたのか。 ・・・ええっ!!」
ぴのっきお が うごいて こえ を だして いること に おどろいた ぜぺっとじいさん は、 おもわず ほっぺた を つねりました。
「なんじゃ。 ぴのっきお が うごいて おる! ぴのっきお が しゃべって おる!
・・・わし は、 まだ ゆめ を みとるのか?」
「おとうさん、 ゆめ じゃない よ。 ほし の めがみ が おとうさん の ねがい を かなえて くれたんだ。
それに、 いい こども に なったら、 にんげん に してくれる って」
「おおっ、 ぴのっきお! めがみさま、 ありがとうございます!」
ぜぺっとじいさん は ぴのっきお を だきしめ、 それから おおよろこび で、 ぴのっきお が がっこう へ いける ように じゅんび を して くれました。
「では、 おとうさん。 いってきまーす」
ぴのっきお と じみー が がっこう へ の みち を あるいている と、 まえ から きつね と ねこ が やってきました。
この きつね と ねこ は、 ひと を だまして おかねもうけ を する わるい やつら です。
きつね は ぴのっきお を ひとめ みて、 かねもうけ に なる と かんがえました。
そして ねこ と いっしょ に ぴのっきお の まえに たちふさがると、 ぴのっきお に いいました。
「かわいい ぼうや、 いまから どこへ いくんだい?」
「がっこう だよ」
「がっこう か。 えらい ねえ。 でも、 きみ は みせものごや に いく べき だ」
「みせものごや?」
「そうさ、 きみ なら きっと、 みせものごや の すたー に なれる よ」
「えっ、 すたー に?」
「すたー も すたー、 きみ は だいすたー さ」
「だいすたー か、 がっこう よりも たのしそう だ ね」
ぴのっきお は、 きつね と ねこ に ついて いきました。
「だめだよ ぴのっきお! がっこう へ いかない と、 いい こども に なれない よー!」
じみー も、 あわてて あと を おいました。
さて、 みせものごや の おやかた は、 ぴのっきお を みると おおよろこび で、 きつね と ねこ に おかね を わたしました。
「さあ さあ、 よにも めずらしい、 じぶん で うごく にんぎょう だ よ」
ぴのっきお が ぶたい に でて おどると、 おきゃくさん は しばらく びっくり して、 その ご は われんばかり の だいはくしゅ です。
「わあー、 ぼく は すたー だ」
ぴのっきお は うれしく なって、 むちゅう で おどりました。
でも ぶたい が おわる と、 ぴのっきお は いえ に かえして もらえず、 とりかご へ とじこめられて しまいました。
「あーん、 どうしよう。 いえ へ かえりたい よー。 おとうさん に あいたい よー」
とじこめられた ぴのっきお が ないている と、 よぞら から すーっと ひかり が さしこみ、 ほし の めがみ が あらわれました。
「あら ぴのっきお、 どうして ここ に いるの? がっこう へ は、 いかなかった の?」
「どうして って・・・」
ぴのっきお は、 ほんとう の こと を いったら、 にんげん の こども に して もらえなく なる と おもい、 うそ を つく ことに しました。
「じつは、 がっこう へ いく とちゅう、 いきなり みせものごや の おやかた に つかまったんです」
その とたん、 ぴのっきお の き の はな が、 ずん と のびて いきました。
「あれあれ、 どうして? はな が のびて いくよ」
あわてる ぴのっきお に、 ほし の めがみ は いいました。
「ぴのっきお。 いま、 うそ を つきました ね。 あなた の はな は うそ を つくと、 どんどん のびて いく のです よ」
「うそ じゃない よ。 ほんとう だ よ!」
ぴのっきお が そう いうと、 ずんずん と、 またまた はな が のびて しまいました。
ほし の めがみ は、 きびしい かお で いいました。
「いい ですか。 うそ と いうもの は、ひとつ つくと、 あたらしい うそ を かさねて つかなくては ならなく なります。
ぴのっきお、 あなたは ほんもの の にんげん の こどもに、 なりたくない の ですか?」
「なりたい よ! ほんもの の のんげん の こども に なりたい よ! めがみさま、 うそ を いって ごめんなさい!」
ぴのっきお が なきながら さけぶ と、ほし の めがみ は まほう の つえ を くるり と ふって、 のびた はな を もとどおり に して くれました。
そして、 ぴのっきお が とじこめられて いる とりかご の かぎ を あけてやる と、
「たすけて あげる のは、 こんど だけ です よ、 ぴのっきお。 がんばって!
きっと ほんもの の いいこ に なるのです よ。
それでは じみー、 ぴのっきお を いえ まで おねがい ね」
ほし の めがみ は そう いうと、 ほし へ と かえって いきました。
じみー は ぴのっきお を つれて、 ぜぺっとじいさん の いえ へ かえりました。
それから ぴのっきお は、 めがみさま との やくそく を まもって、 いいこ で たのしく すごしました。
ぜぺっとじいさん は、 とても ぴのっきお を かわいがり、 ぴのっきお も ぜぺっとじいさんの こと が だいすき でした。
けれど、 あるひ の こと。
がっこう へ いく とちゅう の みち で、 ぴのっきお と じみー は、 また あの きつね と ねこ に みつかって しまった のです。
「ぴのっきお、 あいつら は わるい やつ だ。 はやく にげよう」
「うん」
じみー の ことば に うなづいた ぴのっきお は、 すぐに そのば を にげだした のですが、 きつね と ねこ は さきまわり して ぴのっきお を とおせんぼう する と、
「たいへん だ! ぴのっきお。 きみ は びょうき なんだ よ」
「ええっ、 ぼく が びょうき?」
「そうさ。 このまま じゃあ、 しんでしまう だろう。 ああ、きみ が しんだら、 おとうさんは かなしむ だろう」
「そんなー」
「こうなれば、 たすかる ほうほう は ひとつ しか ない」
「どうする の?」
「それ は だ ね。 はやく たのしい ところ へ いって、 おもいっきり あそぶんだ。
そうすれば びょうき が なおり、 げんき に なるんだ よ」
それを きいた じみー が いいました。
「ぴのっきお、だまされるんじゃ ない! あそんで びょうき が なおる なんて、 うそ に きまって いる!」
「おっと、 おまえ は あっちに いってな」
ねこ は じみー を つまみあげると、 ぴゅーん と、 とおく へ なげとばし ました。
そして ぴのっきお の て を ひっぱる と、
「さあ ぼうず、 あにき の ことば を きいた だろう。
はやく げんき に なって、 おとうさん を よろこばせて やろう ぜ」
と、 いって、 ぴのっきお を みなと へ つれて いきました。
みなと には おおきな ふね が とまっていて、 たくさん の こどもたち が のりこんで います。
「あの、 どこ へ いくの?」
ぴのっきお が たずねると、 ひとり の おとこのこ が こたえました。
「しま の ゆうえんち さ。 そこは こどもの てんごく なんだ。 おもいっきり あそぼう」
ぼーっ。
ふね が きてき を ならして、 うみ を すべりだしました。
じみー は ふね の かんぱん に ぴのっきお の すがた が あるのを みると、 いそいで き の いた に つかまって、 ふね を おいかけました。
「まって いろ よ、 ぴのっきお。 かならず たすけて やるから な!」
ふね は やがて、 しま の ゆうえんち に つきました。
「わーい、 ついた、ついた」
こどもたちは さき を あらそって、 ふね を おりました。
かんらんしゃ に、 じぇっとこーすたー に、 めりーごーらんど に、 げーむ に、 だんすほーる と、 ここ には なんでも あります。
どの のりもの も ただ で のりほうだい、 おまけに じゅーす や ぽっぷこーん、 あいすくりーむ、 きゃんでぃ なんか の おかし も、 たべほうだい なのです。
「あははははっ、 たのしい なー!」
ぴのっきお も いつのまにか、 ほし の めがみ との やくそく や じみー の こと、 そして、 だいすきな おとうさん のこと も わすれて あそんで いました。
でも そうして いるうち に、 ぴのっきお は、 まわり の こどもたち が つぎつぎと ろば に なっていく ことに き が ついた のです。
いいえ、 まわり の こどもたち ばかり では ありません、 ぴのっきお の みみ も ろば の みみ に なり、 おしり から は、 しっぽ が はえてきた のです。
「どうしよう!」
ぴのっきお が さけんだ とき、 おいかけて きた じみー が ようやく たどりつき ました。
「ぴのっきお! すぐ うみ に とびこんで にげるんだ! ここ は わるい おとなたち が、 ろば に なった こどもたち を うりとばす ところ なんだ。
きみ は いっしょう、 ろば の まま はたらきたい かい?」
「そんなの いや だ!」
ぴのっきお は うみ に とびこむ と、 じみーと いっしょに いた に つかまって、 やっと の こと で みなと に かえりました。
「いいかい、 ぴのっきお。 わたし も いっしょ に ぜぺっとさん に あやまって あげるから、 ちゃんと、 『ごめんなさい』 って、いうんだ よ」
「うん。 ありがとう、 じみー」
さて、 ようやく ぴのっきお と じみー が いえ に かえって きた のです が、 いえ の なか には ぜぺっとじいさん が いません。
かわりに、 どあ に はりがみ が して ありました。
《たいせつ な ぴのっきお が もどらないので、 さがし に いきます》
ぴのっきお と じみーは いえ で まちつづけ ました が、 いつまで まっても、 ぜぺっとじいさん は もどって きません でした。
そして ぴのっきお と じみーは、 わるい しらせ を みみ に したのです。
それは ぜぺっとじいさんが、 うみで おおくじら に のまれて しまった というのです。
「たいへん だ! おとうさん を たすけなきゃ!」
さっそく ふたり は うみ へ いき、 そして おおくじら を さがしました。
しかし ふたり が おおくじら を みつけた とき、 おおくじら は おおきな くち を あけて、 さかな と いっしょ に、 ぴのっきお と じみー を のみこんで しまったのです。
おおくじら に のみこまれた ふたりは、 おおくじら の くち から おなか の なか へ と およいで いきました。
すると、 おおくじら の おなかの なか で、 ぜぺっとじいさん が しょんぼり と こぶね に のっていた のです。
「おとうさん!」
「おおっ、 ぴのっきお! ゆめ じゃない だろう な、 ああ、 こっち へ おいで。 よしよし、 おまえ さえ いてくれれば、 くじら の なか だろうと かまいは しない よ」
ぜぺっとじいさんは ぴのっきお を しっかり だきしめて、 なんども きす を しました。
「ぼくも あえて うれしい よ。 でも、 くじらの なか でも いい だなんて だめ だよ。 おとうさん、 いえ に かえろう」
「だが、どうやって?」
ぴのっきお は、 ぜぺっとじいさん に いいました。
「ふね の なか の もの を もやして、 けむり で おおくじら の おなかの なか を いっぱいに するんだ よ!
そうすれば、 おおくじら も くるしく なって、 くち を あける に きまって いる よ」
「そうか、 その て が あった か」
さっそく ぜぺっとじいさん と ぴのっきお は、 いす や てーぶる に つぎつぎ と らんぷ の ひ を つけました。
すると たちまち、 おおくじら の おなかは けむり で いっぱいに なりました。
やがて けむり で くるしく なったのか、 おおくじら は おおきな くち を あけると、
「はぁっくしょーーーーん!」
と、 おおきな くしゃみ を したのです。
そのとたん、 おなかの なかの ふねは なみ と いっしょに、 ものすごい いきおい で おおくじら の くち から うみ へ と おしながされました。
「やったー!」
けれど、 おこった おおくじら が、 おいかけてくる では ありませんか。
どっかーーーん!
おおくじら の たいあたり に、 ふね は たちまち こわされて しまいました。
そして ふね を こわした おおくじら は、 ふたたび ぴのっきおたち に おそいかかって きました。
「おとうさん! じみー! はやく ういている もの に つかまって!」
「しかし ぴのっきお、 おまえは」
「ぼく なら だいじょうぶ。 き で できている から みず には しずまない よ」
ぜぺっとじいさん と じみー は、 こわれた ふね の いたきれ や あきびん に つかまって、 なんとか きし まで たどりつきました。
ところが、 ぴのっきお の すがた が ありません。
「おーい、 ぴのっきお! どこ に いるんだー!」
ぜぺっとじいさんと じみーが あたり を さがしている と、 て も あし も こわれて、 ばらばら の ぼろぼろ に なった ぴのっきお が みつかりました。
ぴのっきお は ぜぺっとじいさん たち を たすける ため に、 じぶん が おとり に なったのです。
ぜぺっとじいさん は ばらばら に なった ぴのっきお を つれて かえると、 べっど に ねかせて おいおい と なきました。
「ごめんよ、 ぴのっきお。 たいせつ な おまえ を しなせて しまって」
その よこ で じみー も、 おいおい と なきました。
「ごめんな、 ぴのっきお。 きみ を にんげん に してみせる と、 やくそく した の に」
その よる おそく、 よぞら が きらり と かがやく と、 ほし の めがみ が ひかり に のって あらわれました。
そして、 べっど に よこたわる ぴのっきお に いいました。
「ぴのっきお。 あなたは おとうさんを たすける ために、 ゆうき を もって がんばりました。
とても いいこ でした よ。 やくそく どおり、 あなたを にんげん の こども に して あげましょう」
ほし の めがみ が まほう の つえ を くるり と ふると、 ばらばら で ぼろぼろ だった ぴのっきお の からだ が みるみる うち に なおって いきました。
き で できた からだ は、 だんだん と にんげん の こどもの はだ に かわって いきました。
やがて、 め も みみ も くち も かみのけ も、 すべて にんげん の こどもに なった ぴのっきお は、 げんき よく べっど を とびおりました。
そして、 なきながら ねむっている ぜぺっとじいさん の ところ へ かけて いくと、 ぜぺっとじいさん に だきついて いいました。
「おとうさん、 なかないで! だって ぼく、 きょう から ほんもの の にんげん の こどもに なったんだ よ!」
「おお、ぴのっきおー!」
ぜぺっとじいさんは、 こんど は うれしくて、 また おいおい と なきだしました。
さて、 ほんもの の にんげん に なった ぴのっきお は、 それから ずっと、 ぜぺっとじいさん や じみー と いっしょに、 いつまでも しあわせに くらしたのです。
おしまい
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