この おはなし を よみました ♪
『もみ の き』 あんでるせん どうわ
もみ の き
むかし むかし、 ある もり の なか に、 ちいさい もみ の き が ありました。
「あっ、 ぼく の あたま の うえ を また、 うさぎ が とびこした。
いやだな、 はやく おおきく なりたい な」
もみ の き は、 うえ を みあげて は おおきい き を うらやましい と おもいました。
おひさま が、 それを みて いいました。
「あせらない で も いいよ。 いつか いや でも おおきく なる さ。
それより も、 わかい とき を だいじ に する と いい よ」
でも、 ちいさい もみ の き には、 その いみ が よく わかりません。
くりすます が ちかづく と、 もり の わかい き が、 つぎつぎ に きられました。
「ねえ、 すずめさん、 あの き たち は どこ へ いくんだい?」
「あれは、 くりすますつりー に なる の さ。 きらきら した もーる や たま で かざられて、 そりゃあ、 きれい に なる の さ」
「ふうん。 ぼくも、 はやく そんな ふう に なりたい なあ」
それを きいて、 おひさま は いいました。
「この ひろびろ と した もり で、 おまえ は わかい とき を、 たのしんで おく と いい よ」
やがて、 もみ の き は おおきく なり、 うつくしい えだ を ひろげました。
とうとう、 ある とし の ふゆ、 きこり が この もみ の き に め を とめました。
「やあ、 くりすますつりー に ぴったり だ」
もみ の き は きられて、 まち に はこばれ、 ある いえ に かわれました。
え や おきもの の ある りっぱ な ひろま に、 もみ の き は おかれました。
「さあ、 つりー を かざろう、 きれい に かざろう」
こどもたち の はしゃぐ こえ が きこえます。
もみ の き は、 むね が どきどき して きました。
「あっ、 すず が ついた ぞ。 ろうそく も ともった。 さんたくろーす の にんぎょう も いる。 ほし も ある ぞ」
じぶん に つけられる かざり に、 もみ の き は め を みはり ました。
「めりー・くりすます!」
こどもたち は、 つりー の まわり で うたったり、 おどったり、 その にぎやか な こと。
そして、 みんな で くりすます ぷれぜんと の つつみ を ひらきました。
「わあい、 いいな、 うれしい な」
「これ、 わたし、 ほしかった の」
しばらく して、 こどもたち は、 つりー の かざり も わけて もらいました。
すず だ の、 もーる だ の、 それぞれ が すきな もの を もらいました。
つぎ の あさ、 この いえ の しようにん が、 えだ だけ に なった もみ の き を やねうらべや に かたづけ ました。
「くらい し、 ひとり で さびしい な。 それに さむい」
もみ の き が、 ぶるっ と みぶるい した とき です。
ねずみ が とびだして きました。
「あっ、 もみ の き さん だ。 くりすます は おわった の ね。 ぼくたち に きのう の はなし を きかせてよ」
「うん、 じゃあ、 きいて ね」
もみ の き は、 すこし げんき が でて きました。
くりすます の はなし を いろいろ した あと、 じぶん が そだった もり の こと も はなしました。
「おもしろい ね。 それで? それから?」
ねずみたち は、 ねっしん に みみ を かたむけ ました。
でも、 いくにち か すると、 あきて きて、
「もっと ベつ の はなし が いい よ。 べーこん や ちーず が ある ところ は どこ か とか」
「そんなこと は、 ぼく、 しらないんだ」
「つまんない の、 じゃあ ね」
ねずみたち は、 どこか へ いって しまいました。
もみ の き は、 また、 ひとりぼっち です。
あるひ、 しようにん が やねうらべや に あがって きました。
もみ の き は、 ひきずられて なかにわ へ だされました。
「ああ、 はな が さいて いる。 とり も うたって いる。
やっぱり そと の くうき は いいなあ。
なにか いいこと が、 おこりそう だ」
もみ の き は よろこびました が、 それどころ では ありません。
もみ の き は、 こーん、こーん と、 いきなり おの で きられて、 まき に されて しまった のです。
まき に なった もみ の き は、 だいどころ の かまど に くベられて、 ぱしぱし と もえ はじめました。
「ああ、 なにもかも おしまい だ。
おひさま が わかい とき を だいじ に しろ と いった のは、 こういう こと だったんだ」
もみ の き は、 ふかい ためいき を つき、 おと を たてて もえて いきました。
おしまい
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