まふゆ の いちご

 

むかし　むかし、　ある　ところ　に、　おちよ　と　おはな　と　いう　しまい　が　いました。

おかあさん　は、　どういうわけか　あね　の　おちよ　が　だいきらい　で、　いつも　いもうと　の　おはな　ばかり　　かわいがって　いた　のです。

ある　ふゆ　の　さむい　ひ　の　こと、　おはな　が　こんな　こと　を　いいました。

「おかあさん。　おはな、　いちご　が　たべたい」

すると　おかあさん　は、　おちよ　に　いいつけ　ました。

「おちよ、　おはな　の　ため　に、　いますぐ　いちご　を　つんで　おいで」

でも　いちご　は　なつ　の　くだもの　なので、　こんな　さむい　ふゆ　に　ある　はず　が　ありません。

そこで、　おちよ　は、　「しかし、　おかあさま。　ふゆ　に　いちご　なんて」

と、　いった　の　ですが、

「つべこべ　いうんじゃない　よ！　　かわいい　おはな　が　いちご　が　たべたい　と　いってるんだから、　おまえ　は　いちご　を　つんで　くれば　いいんだ　よ！　

ほれ、　べんとう　に　おにぎり　を　やる　から、　はやく　いくんだ　よ！」

と、　おかあさん　は　おちよ　を　いえ　から　おいだして　しまいました。

さて、　おちよ　は　しかたなく　ゆき　の　ふる　やま　へ　と　いった　の　です　が、　どこ　にも　いちご　なんて　ありません。

「どうしよう。　でも、　このまま　じゃ　かえれない　し・・・」

こまった　おちよ　が　ゆき　の　うえ　で　とほう　に　くれて　いる　と、　ちかく　の　やまごや　に　すむ　おじいさん　が、　

おちよ　を　じぶん　の　やまごや　に　まねいて　いいました。

「どうした。　こんな　ゆき　の　やま　に、　たった　ひとり　で　なに　を　し　に　きたんじゃ？」

「はい、　おかあさま　に、　いちご　を　つんで　こい　と　いわれた　の　で」

「そうか。　いちご　を　のう。　それ　より、　さむい　だろう。　えんりょ　せず　に　ひ　に　あたれ」

「はい。　ありがとう　ございます」

おちよ　は　ひ　に　あたり　ながら、　おじいさん　に　たずね　ました。

「おじいさん、　おべんとう　を　たべて　も　いい？」

「ああ、　いいとも、　いいとも」

おちよ　が　べんとう　の　つつみ　を　ひろげる　と、　そこ　に　は　こめ　が　ひとつぶ　も　はいって　いない、

ちいさな　ひえ　の　おにぎり　が　ひとつ　はいって　いた　だけ　でした。

それ　を　みた　おじいさん　は、　おちよ　に　たずね　ました。

「すまん　が、　わし　に　も、　ちょっと　わけて　くれんか？」

「うん。　これ　で　よかったら、　みんな　あげる」

「そうか。　おまえ　は　いいこ　だ　な。　・・・そう　そう、いちご　を　つみ　に　きた　なら、　こや　の　まえ　の　ゆき　の　きえた　ところ　を　さがして　みる　と　いい　ぞ」

そこで　おちよ　が　こや　を　でて　みる　と、　ゆき　の　きえた　ところ　に　まっか　な　いちご　が　たくさん　あった　の　です。

よろこんだ　おちよ　は、　かご　いっぱい　に　いちご　を　つんで　いえ　へ　かえりました。

すると、　いちご　を　つんで　こい　と　いった　おかあさん　が　びっくり　して、　おちよ　に　たずね　ました。

「おちよ、　おまえ、　この　さむい　ふゆ　の　どこ　に　いちご　が　あったんだい？」

そこで　おちよ　は、　おかあさん　と　おはな　に、　やまごや　で　の　できごと　を　はなして　きかせました。

すると　おはな　が、

「あした　は、　おはな　が　いちご　を　つみ　に　いく」　と、　いいだした　のです。

そして　つぎ　の　ひ、　おはな　は、　おかあさん　が　ようい　して　くれた　おべんとう　と　かご　を　もって、　

おちよ　に　おしえて　もらった　ように　やまごや　の　おじいさん　の　ところ　へ　いきました。

「おじいさん。　わたし、　いちご　を　つみ　に　きました」

「そうか、　いちご　を　のう。　それ　より、　さむい　だろう。　えんりょ　せず、　ひ　に　あたれ」

おはな　は　ひ　の　そば　に　いく　と、　なに　も　いわず　に　べんとう　を　ひろげ　ました。

おべんとう　は、　おちよ　の　とき　と　ちがって、　おいしそう　な　まっしろな　ごはん　の　おにぎり　が　ふたつ　はいって　いました。

それ　を　みた　おじいさん　は、　おはな　に　たずね　ました。

「すまん　が、　わし　に　も、　ちょっと　わけて　は　くれんか？」

しかし　おはな　は、　「いや　や、　これ　は　おはな　の　だから、　おじいさん　に　は　やれん」

と、　おじいさん　の　め　の　まえ　で、　ふたつ　の　おにぎり　を　おいしそう　に　たべて　しまった　のです。

がっかり　した　おじいさん　は、　おはな　に　いいました。

「おまえ、　いちご　を　つみ　に　きた　なら、こや　の　まえ　の　ゆき　の　きえた　ところ　へ　いって　みな」

そこで　おはな　が　こや　を　でて　みる　と、　ゆき　の　きえた　ところ　に　まっか　な　いちご　が　たくさん　あった　のです。

おはな　は　その　いちご　を　かご　いっぱい　に　つむ　と、　よろこんで　いえ　へ　かえりました。

「おかあさん、　ただいま。　いちご　を　たくさん　つんで　きた　よ。　ほら」

おはな　が　そう　いって　かご　を　あけて　みる　と、　なか　に　は　いちご　で　は　なくて、　へび　や　かえる　や　むかで　が　いっぱい　はいって　いた　そう　です。

 おしまい