この おはなし を よみました ♪
『 くらげ の おつかい 』 にほん の むかしばなし
くらげ の おつかい
むかし むかし、 うみ の そこ に りゅうおう と おきさき が りっぱ な ごてん を こしらえて すんで いました。
うみ の なか の おさかな と いう おさかな は、 みんな りゅうおう の いせい に おそれて その けらい に なりました。
あるとき りゅうおう の おきさき が、 ふと した こと から たいそう おもい びょうき に なりました。
いろいろ に て を つくして、 くすり と いう くすり を のんで みました が、 ちっとも ききめ が ありません。
そのうち だんだん に からだ が よわって、 きょう あす も しれない ような むずかしい ようだい に なりました。
りゅうおう は もう しんぱい で しんぱい で、 たまりません でした。
そこで みんな を あつめて 「いったい どうしたら いいだろう。」 と そうだん を かけました。
みんな も 「さあ。」 と いって かお を みあわせて いました。
すると そのとき はるか しも の ほう から たこ の にゅうどう が はちほんあし で にょろにょろ でて きて、 おそる おそる、
「わたくしは しじゅう おか へ でて、 にんげん や いろいろ の おか の けもの たち の はなし も きいて おります が、 なんでも さる の いきぎも が、 こういうとき には いちばん ききめ が あるそう で ございます。」
と いいました。
「それは どこ に ある。」
「ここ から みなみ の ほう に さるがしま と いう ところ が ございます。
そこ には さる が たくさん すんで おります から、 どなた か おつかい を おやり に なって、 さる を いっぴき おつかまえ させ に なれば、 よろしゅう ございます。」
「なるほど。」
そこで だれ を この おつかい に やろうか と いう そうだん に なりました。
すると たい の いう こと に、
「それは くらげ が よろしゅう ございましょう。
あれは かたち は みっともない やつ で ございます が、 よつあし が あって、 じゆう に おか の うえ が あるける の で ございます。」
そこで くらげ が よびだされて、 おつかい に いく こと に なりました。
けれど いったい あまり き の きいた おさかな で ない ので、 りゅうおう から いいつけられて も、 どうして いいか こまり きって しまいました。
くらげ は みんな を つかまえて、 かたっぱし から ききはじめ ました。
「いったい さる と いう のは どんな かたち を した もの でしょう。」
「それは まっか な かお を して、 まっか な おしり を して、 よく き の うえ に あがって いて、 たいへん くり や かき の すきな もの だよ。」
「どうしたら その さる が つかまる でしょう。」
「それは うまく だます の さ。」
「どうして だましたら いいでしょう。」
「それは なんでも さる の き に いりそう な こと を いって、 りゅうおう さま の ごてん の りっぱ で、 うまいもの の たくさん ある はなし を して、 さる が きたがる ような はなし を する の さ。」
「でも どうして うみ の なか へ さる を つれて きましょう。」
「それは おまえ が おぶって やる の さ。」
「ずいぶん おもい で しょう ね。」
「でも しかた が ない。 それは がまん する さ。 そこ が ごほうこう だ。」
「へい、 へい、 なるほど。」
そこで くらげ は、 ふわり ふわり うみ の なか に うかんで、 さるがしま の ほう へ およいで いきました。
二
やがて むこう に ひとつ の しま が みえました。
くらげ は 「あれ が きっと さるがしま だな。」 と おもい ながら、 やがて しま に およぎ つきました。
おか へ あがって きょろ きょろ みまわして います と、 そこ の まつ の き の えだ に まっか な かお を して、 まっか な おしり を した もの が またがって いました。
くらげは、 「ははあ、 あれが さる だ な。」 と おもって、 なにくわない かお で、 そろそろ と そば へ よって、
「さるさん、 さるさん、 こんにちは、 いい おてんき です ね。」
「ああ、 いい おてんき だ。
だが おまえさん は あまり みかけない ひと だ が、 どこ から きた の だ ね。」
「わたし は くらげ と いって りゅうおう の ごけらい さ。
きょう は あんまり おてんき が いい ので、 うかうか このへん まで あそび に きた の です が、 なるほど この さるがしま は いい ところ です ね。」
「うん、 それは いい ところ だ とも。
この とおり けしき は いい し、 くり や かき の み は たくさん ある し、 こんな いい ところ は ほか に は あるまい。」
こう いって さる が ひくい はな を いっしょうけんめい たかく して、 とくい らしい かお を します と、 くらげ は わざ と、 さも おかしくって たまらない と いう ように わらいだしました。
「はっは、 そりゃ さるがしま は いい ところ に は ちがいない が、 でも りゅうぐう と は くらべもの に ならない ね。
さるさん は まだ りゅうぐう を しらない もの だから、 そんな こと いって いばって おいで だ けれど、 そんな こと を いう ひと に いちど りゅうぐう を みせて あげたい もの だ。
どこ も かしこ も きん ぎん や さんご で できて いて、 おにわ には いちねんじゅう くり や かき や いろいろ の くだもの が、 とりきれない ほど なって います よ。」
こう いわれる と さる は だんだん のりだして きました。
そして とうとう き から おりて きて、
「ふん、 ほんとう に そんな いいところ なら、 わたし も いって みたい な。」
と いいました。
くらげ は こころ の なか で、 「うまく いった。」 と おもい ながら、
「おいで に なる なら、 わたし が つれて いって あげましょう。」
「だって わたし は およげない から なあ。」
「だいじょうぶ、 わたし が おぶって いって あげます よ。
だから、 さあ、 いきましょう、 いきましょう。」
「そうかい。 それじゃあ、 たのむ よ。」
と、 とうとう さる は くらげ の せなか に のりました。
さる を せなか に のせる と、 くらげ は また ふわり ふわり うみ の うえ を およいで、 こんど は きた へ きた へ と かえって いきました。
しばらく いく と さる は、
「くらげさん、 くらげさん。 まだ りゅうぐう まで は とおい の かい。」
「ええ、 まだ なかなか あります よ。」
「ずいぶん たいくつ する なあ。」
「まあ、 おとなしく して、 しっかり つかまって おいで なさい。
あばれる と うみ の なか へ おちます よ。」
「こわい なあ。 しっかり たのむ よ。」
こんな こと を いって おしゃべり を して いく うち に、 くらげ は いったい あまり りこう でも ない くせに おしゃべり な おさかな でした から、 つい だまって いられなくなって、
「ねえ、さるさん、 さるさん、 おまえさん は いきぎも と いう もの を もって おいで ですか。」
と ききました。
さる は だしぬけ に へんな こと を きく と おもい ながら、
「そりゃあ もって いない こと も ない が、 それ を きいて いったい どうする つもり だ。」
「だって その いきぎも が いちばん かんじん な ようじ なの だ から。」
「なに が かんじん だ と。」
「なあに こちら の はなし です よ。」
さる は だんだん しんぱい に なって、 しきり に ききたがり ます。
くらげは よけい おもしろがって、 しまい には おちょうし に のって さる を からかい はじめました。
さる は あせって、
「おい、 どう いう わけ だって ば。 おいい よ。」
「さあ、 どうしよう か な。 いおう かな、 いうまい かな。」
「なんだって そんな いじ の わるい こと を いって、 じらす の だ。 はなして おくれ よ。」
「じゃあ、 はなします が ね、 じつ は このあいだ から りゅうおう の おきさきさま が ごびょうき で、しにかけて おいで に なる の です。
それで さる の いきぎも と いう もの を あげなければ、 とても たすかる みこみ が ない と いう ので、 わたし が おまえさん を さそいだし に きた の さ。
だから かんじん の ようじ と いう のは いきぎも なんです よ。」
そう きく と さる は びっくり して、 ふるえあがって しまいました。
けれど うみ の なか では どんな に さわいで も しかたが ない と おもいました から、 わざ と へいき な かお を して、
「なんだ、 そんな こと なの か。
わたし の いきぎも で、 りゅうおう の おきさきさん の びょうき が なおる と いう の なら、 いきぎも ぐらい いくらでも あげる よ。
だが なぜ それ を はじめ から いわなかった ろう なあ。
ちっとも しらない もの だから、 いきぎも は つい でがけ に しま へ おいて きた よ。」
「へえ、 いきぎも を おいて きた の ですって。」
「そう さ、 さっき いた まつ の き の えだ に ひっかけて ほして ある の さ。
なにしろ いきぎも と いう やつ は ときどき だして、 せんたく しないと、 よごれる もの だから ね。」
さる が まじめ くさって こう いう もの ですから、 くらげ は すっかり がっかり して しまって、
「やれ、 やれ、 それは とんだこと を しました ねえ。
かんじん の いきぎも が なくって は、 おまえさん を りゅうぐう へ つれて いって も しかたが ない。」
「ああ、 わたし だって りゅうぐう へ せっかく いく のに、 おみやげ が なくなって は、 ぐあい が わるい よ。
じゃあ ごくろう でも、 もう いちど しま まで かえって もらおう か。
そうすれば いきぎも を とって くる から。」
そこで くらげ は ぶつぶつ いいながら、 さる を せおって、 もと の しま まで かえって いきました。
さるがしま に つく と、 さる は あわてて くらげ の せなか から とびおりて、 するする と き の うえ へ のぼって いきました が、 それきり いつまで たっても おりて は きませんでした。
「さるさん、 さるさん、 いつまで なに を して いる の。
はやく いきぎも を もって おりて おいで なさい。」
と くらげ は じれったそう に いいました。
すると さる は き の うえ で くつくつ わらいだして、
「とんでもない。 おととい おいで。 こんにちは ごくろうさま。」
と いいました。 くらげ は ぷっと ふくれっつら を して、
「なんだって。 じゃあ いきぎも を とって くる やくそく は どうした の です。」
「ばか な くらげ やい。 だれ が じぶん で いきぎも を もって いく やつ が あるもの か。
いきぎも を とられれば いのち が なくなる よ。 ごめん、 ごめん。」
こう いって さる は き の うえ から あかんべい を して、
「それ ほど ほしけりゃ あがって おいで。 くやしく も あがれまい、 わあい。 わあい。」
と いいながら、 あかい おしり を さんど たたきました。
いくら ばか に されて も、 くらげ は どうする こと も できない ので、 べそ を かきながら、 すごすご りゅうぐう へ かえって いきました。
りゅうぐう へ かえる と、 りゅうおう はじめ みんな まちかねて いて、
「さる は どうした。 どうした。 いきぎも は どうした。 どうした。」
と、 おおぜい くらげ を とりかこんで せきたて ました。
ほか に しかた が ない ので、 くらげ は せっかく さる を だまして つれだしながら、 あべこべ に だまされて、 にげられて しまった はなし を しました。
すると りゅうおう は まっか に なって おこりました。
「ばか な やつ だ。 とんま め。 あほう め。
みんな、 こらしめ の ため に こいつ の ほね の なくなる まで、 ぶって、 ぶって、 ぶちすえろ。」
そこで たい や、 ひらめ や、 かれい や、 ほうぼう や、 いろいろ な おさかな が よって たかって、 にげまわる くらげ を つかまえて、 まんなか に ひきすえて、
「この おしゃべり め。 この ですぎもの め。 この まぬけ め。」
と くちぐち に いいながら、 めちゃめちゃ に ぶちすえた もの です から、 とうとう からだじゅう の ほね が、 くなくな に なって、 いま の ような め も はな も ない、 のっぺらぼう な ほねなし の くらげ に なって しまいました。
おわり
If you want to read the Japanese sentence with 漢字+ふりがな, click the the picture of story, please^^
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ゆめよみ おはなし ひなたぼっこ
Yume-Yomi Ohanashi Hinatabokko
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