きん の おの　ぎん の おの

むかし　ある　おとこ　が、　かわ　の　そば　で　き　を　きって　いました。

ところが　て　が　すべって、　もって　いた　おの　を　かわ　に　おとして　しまいました。

おとこ　は　こまって　しまい、　しくしく　なきました。

おの　が　ない　と、　しごと　が　できない　から　です。

すると　かわ　の　なか　から　へるめす　と　いう　かみさま　が　でて　きて、　ぴかぴか　に　ひかる　きん　の　おの　を　みせました。

「おまえ　が　おとした　のは、　この　おの　か？」

「ちがいます。　わたし　が　おとした　のは、　そんな　に　りっぱ　な　おの　では　ありません」

すると　かみさま　は、　つぎ　に　ぎん　の　おの　を　だしました。

「では、　この　おの　か？」

「いいえ。　そんな　に　きれい　な　おの　で　も　ありません」

「では、　この　おの　か？」

かみさま　が　さんばんめ　に　みせた　のは、　つかい　ふるした　きたない　おの　です。

「そうです。　そうです。　ひろって　くださって　ありがとう　ございます」

「そうか、　おまえ　は　しょうじき　な　おとこ　だ　な」

かみさま　は　かんしん　して、　きん　の　おの　も　ぎん　の　おの　も　おとこ　に　くれました。

よろこんだ　おとこ　が　この　こと　を　ともだち　に　はなす　と、　ともだち　は　うらやましがって、

「おれ　も　きん　の　おの　を　もらって　こよう」

と、　さっそく　きたない　おの　を　もって　かわ　へ　でかけて　いきました。

そして、　「えいっ！」

と、　わざ　と　おの　を　かわ　に　なげる　と、　しくしく　うそなき　を　はじめました。

そこ　へ　かわ　から　かみさま　が　でてきて、　ぴかぴか　に　ひかる　きん　の　おの　を　みせました。

「おまえ　が　おとした　のは、　この　おの　か？」

「そうです。　そうです。　きん　の　おの　です。　その　きん　の　おの　を　かわ　に　おとして　しまったんです」

とたんに、　かみさま　は　め　を　つりあげて、

「この　うそつき　の　よくばりもの　め！！」

こわい　こえ　で　どなる　と、　かわ　の　なか　へ　もどって　しまいました。

うそつき　で　よくばり　な　ともだち　は、　じぶん　の　おの　も　ひろって　もらえず、　いつまでも　かわ　の　そば　で　わんわん　ないて　いました。

かみさま　は　しょうじき　な　ひと　には　やさしく　してくれます　が、　それだけ、　うそつき　には　きびしい　たいど　を　とります。

よくばって　うそ　を　つく　と、　けっきょく　は　まえ　より　も　そん　を　するのです。

おしまい… 

※　みんな　の　しっている　「きん　の　おの、　ぎん　の　おの」　です。

だいたい　は　「みずうみ　の　めがみさま　」　が　おおい　ですが、　ほんらい　は　この　おはなし　の　よう　に、　「かわ　の　かみ　へるめす」　なんだそうです。