Yume-Yomi Ohanashi Hinatabokko [ Hikoiti to sakura no hana ] ひらがな『ひこいちとさくらのはな』ゆめよみおはなしひなたぼっこ

ひこいち　と　さくら　の　はな

むかしむかし　ひこいち　と　いう、　とても　かしこい　こども　が　いました。

ある　ひ　の　こと、　ひこいち　の　いえ　の　となり　に、　ある　むら　の　ちょうじゃ　が　ひっこして　きました。

ひこいち　は　びんぼう　でも　はな　が　すき　で、　うめ　や　さくら　を　だいじ　に　そだてて　います。

それから　なんねん　か　して、　ひこいち　が　たいせつ　に　そだてた　さくら　が、　かきねごし　に　えだ　を　ひろげて　みごと　な　はな　を　さかせました。

すると、　ちょうじゃ　が　それ　を　みつけて、

「かきねごし　に　でた　はな　は、こっち　の　もの　じゃ。　　　　　　　　　おろう　と　ちぎろう　と、　わし　の　かって。　もんく　は　あるめえ」

と、　みごと　な　さくら　の　き　の　えだ　を、　ぼきぼき　と　へしおって　いくのです。

「ああっ。　なんと　かわいそうな　こと　を」

め　の　まえ　で　せっかく　の　はな　を　おられた　ひこいち　は、　　　くやしくて　たまりません。

そこで、おられた　さくら　の　かたきうち　を　かんがえました。

それから　しばらく　たった、つきよ　の　ばん　の　こと　です。

ひこいち　は　じぶん　の　にわさき　に、　なべ、　かま、　たらい　を　　ならべて、　にぎやか　に　たたき　だした　のです。

♪ ちんちん、　かんかん、　どんどん

あまり　の　さわぎ　に、　ちょうじゃ　が　びっくり　して　いえ　から　でてきました。

「やい　ひこいち。　うるさいぞ！　なに　を　して　いるんだ！」

そして、　かきね　の　すきま　から　ひこいち　の　いえ　を　のぞきこんだ　その　とき　です。

まちかまえて　いた　ひこいち　が、おおきな　てつ　の　はさみ　で、　ちょいっと　ちょうじゃ　の　だんごばな　を　はさみつけた　のです。

「いててててえ！　はなせ　ひこいち。　わし　の　はな　が　ちぎれる。　こら、はなせ！」

「いや、はなさん。　かきねごし　に　でた　はな　は、　こっち　の　もん　じゃ。　

おろうが　ちぎろう　が、　わし　の　かって　じゃ。　もんく　は　あるめえ。

さて、　この　きたない　はな　では、　あの　さくら　の　はな　の　かわり　にも　ならん　が、　まあ　ええか」

そう　いって、　ちょうじゃ　の　はな　を　きりとろう　と　した　ので、　ちょうじゃ　は　なみだ　を　ぽろぽろ　ながし　ながら　いいました。

「ひこいち、　わし　が　わるかった。　こめ　を　いっぴょう　やる　から、　はなして　くれ」

「たった　の　いっぴょう　では、　はなさん」

「なら、にひょう　やる」

「にひょう　でも、　はなさん」

「ならば　さんぴょう。　いや、よんひょう　で　どうだ」

こうして　ひこいち　は　ちょうじゃ　を　さんざん　いためつけた　うえ、こめ　を　ごひょう　も　とりあげて、　やっと　はなして　やった　と　いう　こと　です。

おしまい