むかし、　たいそう　やま ぶかい　むら　に　くらして　いる　おとこ　たち　が、　いくにん　か　で、　えど　けんぶつ　に　でかけた　とき　の　こと　です。

ふゆ　の　こと　なので、　やどや　の　ざしき　には、　ほりごたつ　( ゆか　を　くりぬいて　つくった )　こたつ　が　つくってありました。

「おさむう　ございます　ねえ。　 さあ、　どうぞ、　おこた　に　あたって　ください」

やど　の　おんな　の　ひと　は、　そういって、　だいどころ　の　ほう　に　もどって　いきました。

おとこ　たち　は　たがい　に、

「おまえ、　さき　に　はいれ」

「おまえ　こそ、　さき　に　はいれ」

と、　ゆずりあって、　もじもじ　して　いました。

じつ　を　いうと、　おとこ　たち　の　むら　には、　こたつ　が　なかった　ので、　だれ　も、　こたつ　の　はいりかた　を　しらない　のです。

「まあ、　ここ　は、　しょうや　さん　から　どうぞ」

と、　いう　こと　に　なりました。

しょうやさん　も、　こたつ　に　はいる　のは　はじめて　で、　はいりかた　を　しりません。

でも、　しょうや　と　いえば、　そんちょう　です。

まさか、　しらない　とは　いえません。

（ふろ　に　はいる　ような　もんじゃろ）

「それでは　みなさん、　おさき　に　ごめん」

しょうやさん　は、　きもの　を　ぬぐ　と、　ふんどし　ひとつ　で、　ほりごたつ　に　もぐりこみ　ました。

それから　おもむろ　に、　こたつ　の　なか　を　ひとまわり　する　と、　からだじゅう　が　ぽかぽか　して　きました。

「あー、　いい　こたつ　だった」

しょうやさん　は、　こたつ　から　はいだす　と、　あせ　を　ぬぐって、　きもの　を　きこみました。

「なるほど。　こたつ　って　もの　は、　はだか　で　はいる　の　か」

つれ　の　みんな　は、　しょうやさん　の　まね　を　して、　じゅんぐり　に、　こたつ　に　はいって　は、

「ほんと　に、　けっこう　な、　こたつ　で」

と、　いった　そう　です。