なつ　の　あるひ、　きりぎりす　が　のはら　で　うた　を　うたって　いる　と、　ありたち　が　ぞろぞろ　あるいて　きました。

「おい、　ありくん　たち。　そんな　に　あせ　を　びっしょり　かいて、　なに　を　してるんだい？」

「これは　きりぎりすさん、　わたしたち　は　たべもの　を　はこんで　いる　のです　よ」

「ふーん。　だけど、　ここ　には　たべもの　が　いっぱい　ある　じゃないか。

どうして、　いちいち　いえ　に　たべもの　を　はこぶんだい。

おれ　みたい　に、　おなか　が　すいたら　そのへん　に　ある　たべもの　を　たべて、　あと　は　たのしく　うた　を　うたったり、　あそんだり　して　いれば　いい　じゃないか」

「でも　ね。　きりぎりすさん。

いま　は　なつ　だから　たべもの　が　たくさん　ある　けれど、　ふゆ　が　きたら、　ここ　も　たべもの　は　なくなって　しまいます　よ。

いま　の　うち　に　たくさん　の　たべもの　を　あつめて　おかないと、　あと　で　こまります　よ」

ありたち　が　そう　いう　と、　きりぎりす　は　ばか　に　した　ように、

「ははははははっ」　と、　わらって、

「まだ　なつ　が　はじまった　ばかり。　ふゆ　の　こと　は　ふゆ　が　きて　から　かんがえれば　いい　の　さ」

そう　こたえる　と、　また　うた　を　うたい　はじめました。

さて、　それから　も　まいにち　きりぎりす　は　ようき　に　うたって　くらし、　ありたち　は　せっせ　と　いえ　に　たべもの　を　はこびました。

やがて　なつ　が　おわり、　あき　が　きました。

きりぎりす　は、　ますます　ようき　に　うた　を　うたって　います。

そして　とうとう、　さむい　さむい　ふゆ　が　やって　きました。

のはら　の　くさ　は　すっかり　かれはて、　きりぎりす　の　たべもの　は　ひとつ　も　なくなって　しまいました。

「ああ、　おなか　が　すいた　な。　こまった　な。　どこか　に　たべもの　は　ないかなあ。　・・・あっ、そうだ。

ありくんたち　が、　たべもの　を　たくさん　あつめて　いたっけ。

よし、　ありくんたち　に　なにか　たべさせて　もらおう」

きりぎりす　は　いそいで　あり　の　いえ　に　やってきました　が、　あり　は　いえ　の　なか　から、

「だから、　たべもの　が　たくさん　ある　なつ　の　あいだ　に　たべもの　を　あつめて　おきなさい　と　いった　でしょう。

うち　に　は　かぞく　の　ぶん　の　たべもの　しか　ない　から、　わるいけど、　きりぎりすさん　に　は　あげる　こと　は　できません」

と、　いって、　げんかん　を　あけて　くれません　でした。

きりぎりす　は　ゆき　の　ふる　のはら　の　まんなか　で、　さむさ　に　ふるえながら　しょんぼり　して　いました。

 

いま、　らく　を　して　いる　なまけもの　は、　そのうち　いたい　め　に　あう　と　いう　おはなし　です。

 

※ この　「あり　と　きりぎりす」　は、　もと　の　ぐうわ　で　ある　「せみ　と　あり」　から　へんか　した　おはなし　です。

　「あり　と　きりぎりす　」　いがい　に　も、　「せみ　と　あり」　から　へんか　した　おはなし　は　おおくて、　

「あり　と　こがねむし」　「あり　と　こおろぎ」　「とんぼ　と　きりぎりす」　など　が　あります。

せみ　が　ほか　の　こんちゅう　に　へんか　した　りゆう　は、　おはなし　の　つたわった　くに　に、　その　こんちゅう　が　いなかったり、

おはなし　を　つたえた　ひと　が、かって　に　こんちゅう　を　かえたり　した　から　だそうです。